遠回りが近道だった-研究者から小説家へ-
「一番の近道は遠回りだった」。神戸大学入学式の記念講演で、大ヒット漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の名言を引き、新入生に語りかけた。今年1月、『藍を継ぐ海』で第172回直木賞を受賞した伊与原新さん。神戸大学理学部を卒業し、研究者の道を歩んでいたが、40代を目前に作家に転じた。その歩みは、まさに「遠回り」に見える。研究生活の挫折、しばらく売れなかった小説、それでも書き続けた日々。科学の視点と人間の営みが絡み合う独自の作風で多くの読者を引きつける伊与原さんに、大学時代の思い出や自身の道のり、作品に込める思いなどを